IT業界と残業時間

本日のニュースで2010年11月に自殺した当時29才のSEに労災が認定されたことが報道されていました。月の残業時間が137時間に達し、気分感情障害を発症してとのことでした。

個人的な感想ですが残業時間が原因ではなく、納期を守るようにという客先or自社上司からのプレッシャーや、29才という年齢から下のものの面倒も見なくてはいけない等の心労などのほうが主因のように思います。残業時間の137時間はたしかに多いですが、物凄く多いというわけではありません。ある程度IT業界の経験があればこのぐらいの残業時間は経験しています。経験からいうと残業時間からくる肉体的な疲れよりも、精神的なプレッシャーのほうがダメージは大きいと思います。

私が経験した一番酷い開発現場では平日は朝10時〜深夜2時まで、土日は朝10時から夜24時まで、2ヶ月間休みは1日もありませんでした。一日の労働時間が15時間(内残業は7時間)、休日の残業時間が13時間で1ヶ月の労働時間は約430時間(内残業時間は270時間)でした。そんな状態でも仕事帰りに飲みに行って朝までカラオケ屋で歌って、そのまま出勤したりしていました。景気の良かった頃だったので残業代のおかげで給料が80万円近くありました。ちなみにその開発現場では私が在籍していた1年間に3人が逃げ出し(会社も辞めて2度と来なかった)、車通勤していた人は会社帰りに居眠り運転で対向車線に突っ込んで正面衝突(命は助かった)など酷い状態でした。私は休み無しの状態は2ヶ月だけでしたが、半年ぐらい休み無しの人もいました。さらに凄い人になると、駐車場にワンボックスカーを止めてそこで寝泊りしている人がいました。その人いわく通勤時間分を睡眠に当てたいとのことでした。さいわいシャワー室があるので体も洗えますし、自販機も充実していたので、カップラーメンからハンバーガーまで24時間いつでも食べられます。いま同じことをやれといわれても絶対に無理ですが、当時は若かったから出来たのだと思います。

現在のIT業界では裁量性労働という名目でサービス残業がまかり通っています。仕事の絶対量が減っているので単金のディスカウトが行われ、さらに中間搾取もひどい状態です。しわ寄せは全て末端の作業者に掛かってきます。新卒者にもIT業界の内情が知れ渡り、IT業界は不人気のようです。無理な納期の計画を立てなければ過労死も無くなるのですが、納期が長くなれば上流工程(コンサル〜基本設計)が長くなった分を食いつぶすのでおそらく無駄でしょう。いちばん良いのはデスマーチになりがちな製造〜試験のところで状況を見て納期を見直すことですが、ユーザがそんなことを許すとは思えないので根本的な解決法はありません。

最後は自分の身は自分で守るしかありません。仕事の為に命を落とすのはばからしいことです。